エピローグ
。。。雪も凍るこころ。。。
作者*佑菜
足を進めるごとに冷たい北風が頬をなでる。
肩までのストレートな髪に隠れない顔をマフラーに埋めて寒さをしのぎながら
クリスマスに向けて賑わっている町の中を私はいつもの様に学校へ向かっていた。
共学のG高校に通う2年生で、名前は斉藤 美紀。
勉強はたいして得意でもないし、運動も最低限の事が出来るくらいの普通の高校生。
趣味といえる事だってあまりないし・・・
人と関わったり面倒な事はあんまり好きじゃない。
だから学校だってさっさと授業を終えて早く帰りたいんだけど・・・
「美紀ちゃーん、おはよう!」
・・・・・・ほら、来た。
「今日も寒いねー。あっそうだ、楽譜の方はどう?」
「出来てるよ」
「ぉーさすが美紀ちゃんだぁ♪」
寺田 沙織。
同じクラスの異様に明るい騒がしい子。
今度学校で行われる文化祭の出し物で同じメンバーになってからと言うもの
何でか私につきまとう様になった。
おかげで休み時間も昼休みも朝から晩まで家以外に一人の時間が
まったくと言って良いほどなくなって感謝してるわ・・・
「あんたじゃないんだから、こんな事に余計な時間かける訳ないでしょ」
「あー酷い~!友達いなさそうだからこうやって親切に・・・」
「それが余計なお世話って言うの」
信号が赤に変わって、止まっていた車がいっせいに走りだす。
廃棄ガスが冷気に触れて白く見える。
「そんな意地張んないでよ~」
「意地なんて張ってません」
「もぉ、素直じゃないんだから・・・。同じ“ice”のメンバーでしょお?」
「関係ないから」
冷たくしてるのに相変わらず私の周りをちょこまかしている寺田さん。
何が面白いのか・・・。
Iceって言うのは文化祭の為に作られたバンドグループの事。
さっきも言ったけど、私と寺田さんはこの中で知り合った、と言うか
初めて顔を合わせた。
軽い挨拶程度しか話していないというのにこの子は・・・
けど、顔と性格に似合わずドラムの腕は凄いみたい。
まだ実際には見たことないけど、誰かがそう話してた気がする。
だからかは知らないけど今回もドラムを担当してる。
私に付きまとう暇があるなら練習でもしていればいいのに。
「でも、本当楽しみだなぁ」
「・・・何が?」
信号が青になって進むと、後ろからついて来る寺田さんが楽しそうな声で
そう呟いてきた。
「文化祭♪」
「そんなに演奏したいならさっさと学校行ってすれば良いのに」
「違うよー!まぁ確かにそれもあるけどぉ・・・」
「?他に楽しみな事なんてあったっけ?」
「美紀ちゃんの歌っ♪」
「・・・あっそ・・」
そんな笑顔でたんたんと・・・。
まったく、ふざけた事を言ってくれるわ。
バンドなんてただでさえ面倒なのに、私はもっとも面倒な役。
・・・ボーカルなんて何でやらなくちゃいけないのよ。
文化祭で歌えって?
知らない他人の為なんかに。
歌詞作りなんて本当ダルい以外の何者でもない。
「声綺麗だし、きっと凄い・・・こう、感動する歌になりそぉーっ!」
「馬鹿な事言ってないで、前見て話さないとぶつかるよ」
「へーきへーきっうひゃあっ!!」
「・・・はぁ・・・」
ほら、言ってるそばから転ぶ。
今日も朝から疲れそうだなぁ・・・
ふっと空を見上げるといつの間に降りだしたんだろう。
小さな白い雪が、ふんわりと優しく降っていた。
いかにもクリスマスって感じ・・・そこらの恋人さん達にとっては
最高のデート日和の朝ってところじゃないかな。
まぁ、私には関係ないけどね・・・
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